ServiceNowのリリースサイクル、すなわちバージョン、パッチ、ホットフィックスについて整理します。
要点
・リリースサイクルの構成要素は(メジャー)バージョン、パッチ、ホットフィックスの3つ
・半年に1度新たな(メージャー)バージョンがリリースされ、新機能の追加や既存機能の変更が行われる
・各メジャーバージョンのサポート期間は2つ次のバージョンがリリースされるまで。そのため1バージョンはスキップしてアップグレードすることができる
・パッチはほぼ毎月のペースでリリースされ、既存機能の修正が行われる
・ホットフィックスは次のパッチリリースまで待てない重大な問題の修正が必要な場合にリリースされる
・パッチ/ホットフィックスはユーザ側で適用のスキップや延期が可能だが、Patching Program Targetsという概念があり、各四半期ごとに必ず適用しなければいけないパッチが定められる
リリースサイクルの構成要素
ServiceNowのリリースサイクルを構成する要素は次の3つです。これらを順に見ていきます。
リリース単位 | リリース頻度 | 説明 |
(メジャー)バージョン | 年2回 | 新機能や既存機能に対する変更。それより前の全ての修正を含む。 |
パッチ | 毎月 | 各バージョンに対する修正。それより前の全ての修正内容を含む。基本的に新機能は含まれない。 |
ホットフィックス | 適宜 | 次のパッチを待たずして修正すべき重要度の高い問題の修正。新機能は含まない。 |
(メジャー)バージョン
ServiceNowのリリースサイクルにおける最も大きな単位は(メジャー)バージョンです。新たなバージョンには、新機能や既存機能に対する変更、過去の全ての修正が含まれます。
バージョン名にはAspen、Berlin、…、Rome、San Diegoと世界の都市名が使われており、新たなバージョンがリリースされるごとに、頭文字のアルファベットが進みます。そして、2022年3月時点の最新バージョンは現在San Diegoで、次のTはTokyoになると予想されています。
ここしばらくは、毎年2回、Q1の後半(2,3月)ごろ、Q3の後半(9,10月)ごろに最新バージョンがリリースされています。
サポート期限は2つ次のバージョンがリリースされるまで
各バージョンのサポート期限は、2つ次のバージョンがリリースされるまでとなっています。Q(Quebec)バージョンであれば、次の次であるS(San Diego)がリリースされるまでです。アップグレードは公式のサポートサイト(NowSupport)から申請を行うことで実施できます。
サポート期限を迎えるまでは過去のバージョンのまま使っていても問題はなく、どのタイミングで次のバージョンにアップグレードするかは、ユーザ側で選択することができますが、2つ次のバージョンがリリースされるタイミングで、自動でアップグレードがスケジュールされることに注意です
なお、ServiceNow社に相談することで、数か月であればアップグレードまで猶予を頂くことができる可能性が高いですが、HWやMWベンダとの契約でよくあるお金を払うことで過去バージョンの保守を延長するという対応は基本的にしてくれません。そのため、計画的にアップグレードを行う必要があります。
パッチ、ホットフィックス
各メジャーバージョンにするマイナーアップデートとして、パッチやホットフィックスがあります。
パッチ
パッチは、各メジャーバージョンに対する変更・修正を目的として、約月1回のペースリリースされます。パッチがリリースされると、非本番環境においてパッチ適用が自動スケジュールされ、その後本番環境でも自動スケジュールされます。パッチの適用はサポートサイト(NowSupport)経由で申請をすることで、スキップや延期が可能です。
執筆時点でのRomeバージョンのパッチリリース状況は次の通りでした。Rome Patch 5,6,7のリリース日を見ると、約1ヶ月ごとにリリースされていることがわかります。(逆に、毎月1日など、明確にリリース日が決まっているわけではありません)
ホットフィックス
ホットフィックスは、次のパッチを待たずして修正すべき重要度の高い問題があった場合にリリースされます。ホットフィックスは、各パッチに対してリリースされることに注意です。公式のナレッジに載っている下図が理解しやすいと思います。Quebec Patch 1 Hot Fix 1,2はQuebec Patch 1とQuebec Patch 2のリリースの間にリリースされ、Quebec Patch 2には、Quebec Patch 1 Hot Fix 1,2が含まれます。
Patching Program Targets
ServiceNowのパッチ、ホットフィックスを理解する上で重要な概念として、Patching Program Targetsという概念があります。パッチの適用は、スキップや延期が可能と記載しましたが、ServiceNow社の会計年度上の各四半期(Quater)において、その四半期中にこのパッチまでは適用しなければならない、というのが決まっています。
ServiceNow社の会計年度は1月始まりなので、各四半期は次のようになっています。
Q1 … 1/1~3/31
Q2 … 4/1~6/30
Q3 … 7/1~10/31
Q4 … 11/1~12/31
執筆時点のドキュメントでは、2022年度のQ1のPaching Targetsは次のようになっていました。Romeバージョンを利用中の場合、Q1中(2022/3/31まで)にRome Patch 4 Hotfix 1bまでは上げなければならない、ということです。
そして、Q2になると、またQ2のPaching Program Targetsが決まり、Q2中(2022/6/30)までにそのパッチまでは適用しなければならない、ということになります。
なお、Paching Programは当該四半期の初めに決まり基本的に変更されることはありませんが、そのパッチにおいて新たなホットフィックスがリリースされた場合、Targetが最新のホットフィックスに変更になることがあります。例えば、Q2開始時点でのRomeバージョンのTargetがRome Patch 9であった場合、もしRome Patch 9に問題が見つかり、ホットフィックスがリリースされた場合、TargetがRome Patch 9 Hotfix 1などに変更される可能性があります。
パッチやアップグレードはインスタンス単位で行う
最後に、上記で説明したパッチやアップグレードは、インスタンス単位でNowSupportから行うことができます。インスタンスやNowSupportについては次の記事で説明しています。
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